秋山薫・Panasonic LUMIX GX7 Mark II「散歩は続くよファースト・シーズン」(未だ世に出ざる文學青年)

レモンだ……

丸善の書棚前にいたわけではない「私」

昨年の夏のころです。南河内のとある駅前商店街を歩いていた私は、路上になにやら黄色いものが置かれているのを目にしました。

レモンがころりとひとつだけ、側溝のフタのうえにあるのです。

「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧(おさ)えつけていた」(梶井基次郎『檸檬』)というわけではありません。私が置いて写真に撮ったわけでも、もちろんありません。洋書店の書棚の前にもいません。

何処かの文學青年が私の反応をこつそり観察してゐるのだらふか

笑ってしまった私の負け

「もしや、未だ世に出ぬ悪戯好きの書生か文學青年が檸檬を地面に置き、何処からか私の反応をこつそりと観察してゐるのだらふか」

などと旧漢字と旧仮名遣いで「文學的に」警戒しながら周囲を見回したのですが、近くにいたのは下校中の高校生たちくらい。それも自転車で商店街をぶっ飛ばしながら、大阪に本社のあるスーパーマーケットチェーン「食品館アプロ」の看板を目にして、ボケツッコミをしながら騒いでいるだけです。

「『アプロ』ってあれやろ! 頭もじゃもじゃの!」
「それ『アフロ』やんけ!」

レモンとアフロにおもわず笑ってしまった私の負けです。いや、勝ち負けではないか。けっきょく、レモンの謎はとけないままです。

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秋⼭ 薫 Kaoru Akiyama
1973年生まれ。鉄道に興味があって写真を始め、いつのまにかカメラ・写真好きに。
専攻はロシア芸術史。もともとは単焦点レンズと一眼レフが好きだったのに、
ソビエトカメラも好きになったあたりからは、試写したカメラはたいてい好きになる幸せ者。
月刊カメラ誌編集部員、季刊カメラ誌編集長を経験。現在はおもにカメラ・写真関連記事の
編集者・写真家として活動し、『ぼろフォト解決』シリーズの編集・執筆も行っている。
個人ブログ https://saliut1500s.blogspot.jp/