小山壯二の深掘! 「HDRについて考える 第4回 手作りHDR」

小山壯二の深掘! 「HDRについて考える 第4回 手作りHDR」

様々なカメラやアプリで「HDR」処理は可能ですが、実際にどのように処理されているか以外に知られていないのではないでしょうか。今回はAdobe Photoshopを使って動作の原理的な説明をザックリ行います。

例として撮影した写真は明暗約1.5段の明るさに差を付けて撮影しています。
明るい方では空は白く雲のグラデーションもありません。暗い画像では桜や画面下の木々は真っ暗です。
双方の写真を使っていいとこ取りをしてゆきます。

 

Photoshopで2枚の画像をレイヤーとして読み込みます。このとき2枚の画像がズレていない事を前提としています。1枚のRAW画像から異なる明るさで2枚現像しても一定の効果が得られますが、被写体が完全に動かないなら、堅牢な三脚を使いカメラを固定し露出を変えて撮影がベストです。ナチュラルな仕上がりのためには、2枚では1.5段程度、3枚では各1段程度が手作りHDRには最適です。
もし手持ち撮影しか出来ない場合では、Photoshopで「レイヤーの整列」を使うと対処できますが、今回は説明しません。

今回は暗い方の画像を明るい方に合成しますので、暗い画像が上です。

次に上になった暗い画像のBチャンネルを複製します。空を合成したい場合は他の色彩が暗くなっているBチャンネルが適していますが、どのチャンネルを選択しても良いし、Labに変換してL(輝度)チャンネルを使う方法もあります。

次に以下の手順でマスクとなる画像を作ります。

1)このチャンネルを、「レベル補正」でシャドー部を潰します。
2)「ダスト&スクラッチ」で点状に残った暗部のハイライトを消します。
3)「ぼかしガウス」で細部をぼかします。

出来上がった画像が以上の様子です。マスクとして使用するので明るい部分が選択されることになります。この画像に対しブラシ等で書き込むことも可能です。右上の空の辺りは少し明るくしても良いところです。

このマスクを上に重なる暗い画像に適用します。

仕上がりはこんな感じです。桜も明るく全体にメリハリもあり、空や雲の階調もしっかり表現出来ています。

以下は1枚のRAW画像を現像時に調整したものですが、桜が暗くただ眠いだけの階調が気持ちよくありません。

簡易的な方法ですが、HDR画像で良く見られる明暗の境目に現れるグラデーションがみてとれ、同様の手法である事がわかると思います。
基本的な作業は同じですが、画像の枚数を増やしさらに暗部だけ追加したり、さらに大きな明暗差にも対応出来ます。実際には重ねる濃さやマスク作りの時にぼかす量や、レベル補正のしかた等々細かなノウハウは数限りなくあります。専用アプリはこうした作業をもっともっと複雑に重ね合わせて合成しています。

「HDR」という処理をブラックボックス的に捉えるのではなく、基本が分かれば撮影時の露出決定にも役立ち、意図通りの仕上がりが容易になると思います。Photoshopのアクションで組み上げることもできますが、あくまで勉強として理解しておけば、専用アプリでは対処できなかった場合の手動HDRとして役に立つと思います。

 

小山壯二
株式会社プロテック代表取締役
いち早くデジタルフォトに取り組み、画像処理前とアナログ時代に培った撮影テクニックで、
精⼀杯写真を撮影する。テスト記事を中⼼にカメラ雑誌への執筆も数多くこなしてきた。
最近はパノラマ撮影など、写真に関する好奇⼼はいまもって旺盛。