小山壯二の深掘「Adobe RGB使ってますか」
今更ですが「Adobe RGB」使ってますか?
私のFBで少し紹介しましたがさらに詳しく紹介したいと思います。
デジタルカメラでは色空間が「sRGB」と「Adobe RGB」が選択出来る場合が殆どですが、どちらが正しい選択でしょう。
長らくこの問題に向き合ってきましたが今までハッキリとした結論が持てないままでした。プリンターがデジタルフォトの最終出力ディバイスではなくなってきた今日、この話をもう一度まとめてみたいと思います。
簡単に2つの色空間を紹介すれば、モニターがブラウン管のCRT時代に大方のディバイスを網羅する目的で標準的色空間として策定されたのがsRGBですが、現在ではCRTは無くなり高性能なLCD全盛の今、充分な色彩表現能力があるとはいえなくなりました。Adobe RGBはAdobe社が作り上げた色空間で色域を大きく広げ、モニターの白輝度も最大180cdまで規格に盛り込みしかも幅を持たせている点は、やや暗めの80cdを基準とするsRGBとはこの点だけでも大きく異なります。
では2つの色域と筆者が使用しているモニターの色空間を比較してみます。
黄色の線で描かれているsRGBが小さな範囲しか表現出来ないことが明白で、比較的安価な高色域LCDよりも遙かに狭いのが現状といえます。
では写真撮影ではどちらを使う事が賢明な選択なのでしょう。「高彩度な色彩が好き」とか、「広い色域はなんとなく良さそう」、「いやsRGBで必要充分」と、いろんな考え方があると思いますが、プリントや印刷での再現だけにこだわれなくなった昨今では、高色域モニターや高性能なTVもより多くの色彩を再現出来るディバイスが、写真表現そのものの幅を広げてくれるはずです。
「どっちでもいいや」と諦め結論を出す前に以下の資料をご覧ください。
<同じ色彩がsRGBとAdobe RGBで記録した場合の差>
sRGBが再現出来る最大彩度の色彩を、各チャンネル8bit(256階調)でAdobe RGBで表現すると、荒い変化となってトーンが滑らかに再現出来ない事が起こりえます。データ量は大きくなりますが各チャンネルを16bit(65,536階調)記録すればこの問題は回避できるので、Adobe RGBを使いこなす上で必須かもしれません。
画像データの滑らかさ検証
<sRGBとAdobe RGBで同じ色彩の画像を各チャンネル8bitで制作(データのRGB数値は異なります)>
<上記色彩のAdobe RGB中のRチャンネルのヒストグラム>
<上記色彩のsRGB中のRチャンネルのヒストグラム>
Adobe RGBの方が櫛形が強く滑らかさに欠けています。Adobe RGBは色域が広いため、8bitで扱うにはやや滑らかさに余裕がありません。そのため、モニターやプリンター出力では滑らかさを欠いたり、色彩編集によりトーンジャンプが目立ったりする場合があります。
では冒頭の問いはどちらが正しいのでしょう。
状況を整理します
1)カメラのJPEG撮って出しは8Bit記録。16bit記録できるRAW以外のファイル形式は選択出来ないカメラが多い。
2)表示ディバイスの進化により、プリント等の狭い色空間ディバイスだけを最終出力と決められない
3)撮影後におこなう画像の色彩や階調の調整は避けられない
4)鮮やかな被写体を鮮やかに表現したい
多くの方に当てはまる事柄ですが上記をふまえて筆者からの提案です。
お勧めの色空間運用方法
1)撮影はsRGB JPEGとRAWの同時撮影
2)被写体にAdobe RGBを必要としそうな鮮やかな色彩が無い場合には、大幅な色彩編集をしない事を条件にJPEG撮影データも有効
3)高彩度高輝度のTVやPCモニターでの利用を考慮して、RAWデータで調整し現像はAdobe RGBの16bitデータとする
4)保管データ形式はPhotoshop形式やTIFF形式など16bit記録が可能な形式を選択
どちらの色空間が良いとか悪いではなく、利点を理解した上で使いわけが良いと思います。
小山壯二 株式会社プロテック代表取締役 いち早くデジタルフォトに取り組み、画像処理前とアナログ時代に培った撮影テクニックで、 精⼀杯写真を撮影する。テスト記事を中⼼にカメラ雑誌への執筆も数多くこなしてきた。 最近はパノラマ撮影など、写真に関する好奇⼼はいまもって旺盛。