吉田尚幸・千歳市の生き物のはなし

寒いのは苦手だ。
北海道に住んでいて何を言っているのかと、怒られそうだ。
今年の正月は寒かった…。
年のせいかと思っていたが、周りのみんなも口をそろえて言うので
どうやら気のせいではない。

地元の生き物のふるまいを写真にとらえたくて
日々、自然公園や川沿いなどを観察しながら散策しています。

私の住む千歳市には千歳川(石狩川水系)という立派な川が流れていて
街の中心を流れるこの川には、秋になるとたくさんのサケたちが帰ってきます(シロザケ/遡上)
そのサケを捕獲するために遡上数が多くなる秋を中心として、
その前後の夏場から年末にかけて川に設置されているものにインディアン水車というものがあります。
(水車といってもサケを捕獲するために特別に作られたものです)。

千歳川、橋はインディアン水車橋、奥の建物は千歳水族館、左下がインディアン水車

川を柵でせき止めるようにブロックし、水車までのルートをつくり、サケを誘導します。
回転している水車の羽の中には空間が設けられており、上流に行こうとして、はまったサケが、
からくり仕掛けのごとく、隣のいけすに自動的に入ってしまうという仕組みになっています。

サケが湧き水のある上流へと遡上する性質と、ダムのおかげで水位が安定している千歳川の特徴と、
先人の方々のたゆまぬ研究と多大な努力があったからこそ成し遂げたものですが、
ピーク時にはたくさんのサケたちが押し寄せて、いけすからサケを運びだす作業も相まって、
観光の方々がたくさん訪れ、千歳市の秋の風物詩のひとつになっています
(詳しくは ”サケのふるさと 千歳水族館” さんのホームページなどをご参照ください)。

補足になりますが、この捕獲作業はサケを増やすため
(次の年の春に川にたくさんの稚魚を放流するために)ふ化事業として行っています
(詳しくは ”一般社団法人 日本海さけ・ます増殖事業協会”さん、
また”千歳さけますの森 さけます情報館”さん、のホームページなどをご参照ください)。

サケが押し寄せている様子 2015年 秋

ということで
ぜひぜひ、千歳市に遊びに来てくださいね〜(^o^)/

と、まちの宣伝もあるのですが…….。

サケたちの遡上は、水車も柵も撤去された年明けも続いておりまして
産卵のために上流に遡上し、卵をまもり終えて、ちから尽き果て、
白っぽく(免疫力がなくなり、水カビなどで)なってしまったサケの亡骸
(なきがら※いわゆるホッチャレ)が、食糧の厳しい冬場の生き物たち
(キタキツネやカラス、トビ、など他にもたくさん)の大切な栄養源になっています。

昔からこの北海道の地で暮らし歴史を作ってこられたアイヌ民族の方々は
サケをカムイチェプ(神の魚)と呼び、大切に接していたというのも、食糧にするということ、
それ以上に生命の神秘というか、そういったものを常に感じておられたのではないかなと…
指先を出しているだけでも凍傷になりそうな極寒の川辺で、ゆらめくホッチャレをみていると、
サケのいきざまといいますか、その長い旅路に想いをはせてしまい、
なんだかせつなくなってしまいます。

ちから尽きた千歳川のサケ(ホッチャレ)

サケを取り巻く生き物模様のひとつに
道東などでは有名なオジロワシも
数は少ないですが、寒い時期の千歳に姿を見せます。
つばさを広げると2メートル近くあり、なかなかの迫力です。
市街地の道の駅サーモンパーク千歳周辺や、青葉公園の千歳川沿いなどにもいることがあり、
ちょっとびっくりします。

サーモンパーク千歳周辺にいたオジロワシ    その1 2018年 2月

サーモンパーク千歳周辺にいたオジロワシ その2 2018年 2月

まちなかで、こんな大きなワシを見られる場所はなかなかありません。
やはりエサになるサケのおかげと言ってしまってもいいと思います。
当然ですが、サケがいなくなるというか川底のホッチャレなどもほとんど見られなくなると
オジロワシの姿も千歳市内では見られなくなります。
冬場に千歳市に来られることがあれば
川沿いの木の上にちょっと目を向けてみられるのもよろしいかなと思います。

あ、車を運転中はやめてくださいね、安全運転でお願いします。
ちょっとざっくりな感じで申し訳ありませんが、今回はこのへんで。

冬場の写真撮影は寒くて、みなさんもたいへんだと思いますが、
生き物たちも生き抜くのに必死でもあります。
野生動物の暮らす生活圏というのは、思っている以上に私たちの住む生活圏と重なっています。
くれぐれも周囲の環境や近くに住んでいる方々への配慮や生き物たちへの配慮、
そしてなにより相手や環境を想いやる気持ちを忘れないでいたいものです。

あなたの身近な自然にも、たくさんの驚きと発見があるのではないでしょうか、
ぜひ楽しく写真生活を送っていただきたく思いますm(_ _)m


吉田 尚幸  chironsan
1967年生まれ 地元千歳市で生き物の生態を学びつつ、日々のふるまいを撮影している
フォトグラファー 
(ストックフォトサイトのPIXTAでは chironsan としても活動中)